群馬県前橋市では、2023年4月より回生電動自転車を活用したレンタサイクルサービスが開始されています。観光のIoT化のツールにレンタサイクルは積極的に活用されていますが、前橋市での事例では対象となる電動アシスト自転車に回生システムが搭載されています。現在、スマートツーリズムではこの回生システムを使用した自転車が注目されています。本記事では、回生システムの基本的なしくみ、回生システムがエコといわれる理由、回生システムのスマートツーリズムへの活用法について解説します。
回生システムの基本的なしくみ
小学校の復習からはじめてみましょう。理科の時間でモーターをぐるぐる回す楽しい実験を皆さんもしたことがありますよね。
モーターとして使用 | 発電機として使用 |
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電圧をかけるとモーターが回る | 外部からモーターを回すと電圧が発生する |
私たちの身の回りの様々な電気機器に使用されているモーターは、電力を流すことで回転し、機器の動力源となります。そしてモーターを豆電球につなげて発電する実験も行ったはずです。モーターの回転軸を外部から回すと電圧が発生して、発電機になります。モーターが発電機にもなれるしくみを回生システムといいます。
回生システムは自転車のダイナモライトがイメージしやすいでしょう。ダイナモライトを作動させると、発電の抵抗で自転車の速度が落ちてペダルが重くなります。運動エネルギーを電気エネルギーに変換するため減速します。これを応用したのが回生電動アシスト自転車です。下図は回生電動アシスト自転車の模式図です。
ブレーキを踏んだときや下り坂で減速時に運動エネルギーを電気エネルギーに変換(生き返らせ)、駆動用バッテリーに回収。上り坂をらくらく進むための動力に再利用しています。
回生システムがエコといわれる理由
通常の自転車と電動アシスト自転車、電動回生アシスト自転車の比較を下表で示します。
通常の自転車 | 電動アシスト自転車 | 電動回生アシスト自転車 | |
ブレーキの種類 | 摩擦ブレーキ | モーターブレーキ | 回生ブレーキ |
しくみ | ブレーキを握るとワイヤーが引っ張られてアームが動き、タイヤのリムを挟む。ブレーキシューが車輪にあたることで摩擦が生じ、自転車のスピードが落ちる。タイヤが回転する運動エネルギーを熱エネルギーに変換。 | ブレーキを握るとモーターが信号を検出し回復充電機能が作動。その際に発生する電気的な制動力を利用する。自転車が下り坂になったときやペダルを漕いでいない状態で自転車の速度が上がると、自動的に回復充電機能が作動。 | 基本的なしくみは、モーターブレーキと一緒。さらに減速時に運動エネルギーを電気エネルギーに変換(生き返らせ)、駆動用バッテリーに回収して再利用する。 |
エコ度 | ★ | ★★ | ★★★ |
通常の自転車は摩擦ブレーキを使用しています。つまり、タイヤが回転する運動エネルギーを熱エネルギーに変換して大気に放出されることによって減速してます。熱エネルギーは貯めることができないため捨てる以外に方法がなく、少し勿体ないです。一方、回生システムを使用した自転車では、ブレーキは運動エネルギーを電気エネルギーに換えてバッテリーに「回」収し、走行に「生」かすことができます。回生エネルギーとして回収した電力を最も必要とするタイミングで使うことができれば、電力使用のピークを抑える効果も期待できます。
回生システムをスマートツーリズムに活用するには?
・回生システムを利用した電動自転車は、運動エネルギーを電気エネルギーに換えてバッテリーに「回」収し、走行に「生」かすことができる。
回生システムを利用した自転車が普及するメリットは、利用者が安全に坂道を上り下りできて環境にやさしいだけではありません。回生自転車に各種センサも搭載してIoT化し、データを送れる状態にすると、自転車をエコなエッジデバイスとして利用することができます。
下図は、群馬県前橋市の回生電動自転車とDXを活用したプラットフォームの概念図です。
先ほどご紹介した回生自転車システムで発電量や位置情報などをセンサから取得しています。そのデータはクラウドにで回収して蓄積・分析されます。これらのビッグデータは、年代による最適な自転車走行ルート提案や安全マップの作製など別の領域へ生かすこともでき、利用者に還元されます。
実証実験の詳細はこちらをご覧ください。(実証実験のページをリンク)