PSoC 5LPとは?仕様・機能・評価ボード・開発環境・対応OSを紹介

PSoC 5LPとは、サイプレス セミコンダクタ(以下、「サイプレス」)のマイクロコントローラです。PSoC 5LPは、Arm Cortex-M3を搭載したSoCです。PSoC 5LPは、システム設計を簡素化し、システムコストを削減します。

SoC(読み方:エスオーシー、ソック)とは

SoCとは、プロセッサの種類の一つ。SoCとは、システムに必要なあらゆる機能を1つのチップ上に搭載したもの。SoCは、「システムを一つのチップ上に載せる」を意味する「System on a Chip」の略。システム全体をチップ上に搭載することで、小型化が可能になるというメリットがある。また、システムの内部接続により消費電力も抑えられる。

PSoCシリーズの製品ライン

製品ライン 特徴
PSoC 1 8ビットM8Cコアマイコン
PSoC 3 8ビット8051マイコン
PSoC 4 32ビットARM Cortex-M0マイコン
PSoC 5LP 32ビットARM Cortex-M3マイコン
PSoC 6 32ビットARM Cortex-M4/Cortex-M0+ マイコン
PSoC アナログコプロセッサ 低コストなアナログコプロセッサ

PSoC 5LPの仕様

データシート PSoC 5800 PSoC 5600 PSoC 5400 PSoC 5200
Arm-Cortex M3 Arm-Cortex M3 Arm-Cortex M3 Arm-Cortex M3
最大CPU速度 80 MHz 80 MHz 80 MHz 80 MHz
フラッシュ/ SRAM(KB) 256/64 256/64 256/64 256/64
ADC 1×20ビットDel-Sig

2×12ビットSAR
2×12ビットSAR 1×12ビットSAR 1×12ビットSAR
DAC 4 4 2 1
コンパレータ 4 4 4 2
SC / CTアナログブロック 4 4 2 0
オペアンプ 4 4 2 0
デジタルフィルターブロック あり あり N N
CapSense あり あり あり あり
ユニバーサルデジタルブロック 24 24 24 24
タイマー/ PWM 4 4 4 4
FS-USB あり あり あり あり
CAN 2.0B あり あり N N
GPIO 62 62 62 62
SIO 8 8 8 8
開発キット CY8CKIT-050PSoC®5LP CY8CKIT-050PSoC®5LP CY8CKIT-050PSoC®5LP CY8CKIT-050PSoC®5LP
プロトタイピングキット CY8CKIT-059PSoC®5LP CY8CKIT-059PSoC®5LP CY8CKIT-059PSoC®5LP CY8CKIT-059PSoC®5LP

PSoC 5LPとは

PSoC 5LPは、低消費電力に特化したSoC

PSoC 5LPは、サイプレス社製のプログラム可能なシステムオンチップです。PSoCとは、「Programmable System On Chip」の略です。PSoC 5LPは、PSoCの中でもCortex-M3を搭載し、低消費電力(Low Power)に特化しています。

PSoC 5LPには、設定可能なアナログ・デジタル双方のペリフェラル(周辺機器)、メモリ、マイコンが集積されています。

PSoC 5LPは、アクティブ、代替アクティブ (AltAct)、スリープ、ハイバネートの 4 種類のモードで機能します。PSoC 5LPは、動作に応じてモードを切り替えられるため、不必要な電力消費を抑えられます。

半導体のSoC(システムオンチップ)、システムLSIとは?定義・意味・特徴をわかりやすく解説

PSoC 5LPの機能

PSoC 5LPの詳しい機能は下記のとおりです。

  • 32ビットArm Cortex-M3 CPU、32割り込み入力
  • 周辺機器とメモリ間のデータ転送を備えた24チャネルのダイレクトメモリアクセス(DMA)コントローラー
  • 24ビット固定小数点デジタルフィルタープロセッサ(DFB)
  • 20以上のユニバーサルビルディングブロックと正確なアナログペリフェラル
  • SmartSense™自動調整を備えた最大62個のCapSense®センサー
  • プログラム可能なオペアンプ、12ビットSAR ADC、8ビットDACを備えた多重化AFE
  • カスタムディスプレイ用の736セグメントLCDドライブ
  • パッケージ: 68-pin QFN, 99-pin WLCSP, 100-pin TQFP
DMA(読み方:ディーエムエー)とは

DMAとは、データ転送方式の一つ。DMAでは、CPUを介さず、入出力装置とメモリの間でデータ転送を行う。「直接メモリアクセス」を意味するDirect Memory Accessの略。これにより、CPUの負担を軽減し、システム全体の性能が向上する。

原文は、下記の通りです。

  • 32-bit Arm Cortex-M3 CPU, 32 interrupt inputs
  • 24-channel direct memory access (DMA) controller with data transfer between both peripherals and memory
  • 24-bit fixed-point digital filter processor (DFB)
  • 20+ Universal Building Blocks and Precise Analog Peripherals
  • Up to 62 CapSense® sensors with SmartSense™ Auto-tuning
  • Multiplexed AFE with programmable Opamps, 12-bit SAR ADC and 8-bit DAC
  • 736 segments LCD drive for custom displays
  • パッケージ: 68-pin QFN, 99-pin WLCSP, 100-pin TQFP

出典:32-bit Arm® Cortex®-M3 PSoC® 5LP

PSoC 5LPの製品ライン

PSoC 5LPの製品ラインは、下記の通りです。

  • PSoC 5800
  • PSoC 5600
  • PSoC 5400
  • PSoC 5200

PSoC 5LPの入手方法

PSoC 5LPのマイコンは、下記のサイプレスのセールスオフィスや、サイプレスのフランチャイズ販売店などで購入できます。

PSoC 5LPの開発環境

PSoC 5LPに対応した代表的な開発環境は、下記の通りです。

  • PSoC Creator
  • IAR Embedded Workbench for Arm
  • Arm Keil MDK
ポイント
  • PSoC 5LPは、低消費電力(Low Power)に特化したSoC
  • PSoC 5LPは、動作に応じてモードを切り替えられるため、不必要な電力消費を抑えられる

PSoC 5LP評価ボード

PSoC 5LPの評価ボードは、下記の2つに大別されます。

  • 開発キット
  • 拡張キット

PSoC 5LPの開発キット

PSoC 5LPの開発キットは、下記の通りです。

搭載マイコン 対象
CY8CKIT-059 PSoC 5LP Prototyping Kit CY8C5888LTI-LP097 低コストで評価したい
CY8CKIT-050 PSoC 5LP Development Kit CY8C5868AXI-LP035 アナログ性能中心に評価したい
CY8CKIT-001 PSoC Development Kit CY8C5868AXI-LP035 サンプルコードを用いて評価したい
FreeSoC2 Development Board – PSoC5LP CY8C5888AXI-LP096 Arduinoを使って簡単に評価したい(販売終了)
mikromedia for PSoC 5LP CY8C5868AXI-LP035 GUI中心に評価したい

CY8CKIT-059 PSoC 5LP Prototyping Kit

CY8CKIT-059は、サイプレス社純正の低コストな評価ボードです。CY8CKIT-059は、CY8C5888LTI-LP097を搭載しています。

CY8CKIT-059には、書き込み用のKitProgプログラマーがあります。KitProgは、サイプレス製の通信ファームウェアです。このため、USBでプログラムの書き換えが可能です。

以上の特徴から、CY8CKIT-059は、「低コストで評価したい」という方に最適な評価ボードです。

CY8CKIT-059 PSoC 5LP Prototyping Kitの価格・購入方法

CY8CKIT-050 PSoC 5LP Development Kit

CY8CKIT-050は、サイプレス社純正の評価ボードです。CY8CKIT-050は、CY8C5868AXI-LP035を搭載しています。CY8CKIT-050は、アナログ領域とデジタル領域を分離して設計されています。このためCY8CKIT-050は、優れたアナログ性能を発揮します。

以上の特徴から、CY8CKIT-050は、「アナログ性能中心に評価したい」という方に最適な評価ボードです。

CY8CKIT-050 PSoC 5LP Development Kitの価格・購入方法

CY8CKIT-001 PSoC Development Kit

CY8CKIT-001は、サイプレス社純正の評価ボードです。CY8CKIT-001は、PSoC 1、PSoC 3、PSoC 4、PSoC 5のうち、いずれかを使用して評価できます。CY8CKIT-001のPSoC 5モジュールには、CY8C5868AXI-LP035が搭載されています。またCY8CKIT-001は、サンプルコードが含まれているため、開発を簡単にスタートできます。

以上の特徴から、CY8CKIT-001は、「サンプルコードを用いて評価したい」という方に最適な評価ボードです。

CY8CKIT-001 PSoC Development Kitの価格・購入方法

FreeSoC2 Development Board

FreeSoC2 Development Boardは、かつて販売されていたSparkfun Electronics社製の評価ボードです。FreeSoC2 Development Boardは、標準のArduino IDEでボードのコードを記述できます。このためFreeSoC2 Development Boardは、開発初心者でも評価が可能です。

Arduino(読み方:アルデュイーノ)

Arduinoは、電子工作用プラットフォーム。初心者にも扱いやすいのが特徴。

また、FreeSoC2 Development Boardには、下記の2つのプロセッサが搭載されています。

FreeSoC2 Development Boardのプロセッサとその対象
  • CY8C5888AXI-LP096:開発向け
  • CY8C5868LTI-LP039:デバッガ/プログラマとして機能する、アプリケーションコードのインストール向け

FreeSoC2 Development Boardは、サイプレス社の提供するPSoC Creator IDE(無料)を使用すると、デバイスを最大限に利用できます。

以上の特徴から、FreeSoC2 Development Boardは、「Arduinoを使って簡単に評価したい」という方に最適な評価ボードです。

mikromedia for PSoC 5LP

mikromedia for PSoC 5LPは、Mikroelectronica社製の評価ボードです。CY8C5868AXI-LP035を搭載しています。mikromedia for PSoC 5LPは、大型320×240 TFTカラーディスプレイを搭載しています。このディスプレイは、タッチスクリーン、ステレオMP3コーデック、および加速度計を備えています。このためmikromedia for PSoC 5LPは、GUI中心の開発・評価に適しています。

GUI(読み方:ジーユーアイ、グイ)とは

GUI(読み方:ジーユーアイ、グイ)は、「Graphical User Interface」の略語です。テキストのほかに画像などが表示できるグラフィカルな表示システムのことです。

以上の特徴から、mikromedia for PSoC 5LPは、「GUI中心に評価したい」という方に最適な評価ボードです。

mikromedia for PSoC 5LPの価格・購入方法

GUIに関する詳細は、以下のページをご覧ください。

GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)とは?意味・仕組み・特徴をわかりやすく解説

ポイント
  • CY8CKIT-059:低コストで評価できる
  • CY8CKIT-050:アナログ性能中心に評価できる
  • CY8CKIT-001:サンプルコードを用いて評価できる
  • FreeSoC2 Development Board – PSoC5LP:Arduinoを使って簡単に評価したい
  • mikromedia for PSoC 5LP:GUI中心に評価したい

PSoC 5LPの拡張キット

PSoC 5LPの拡張キットは、下記の通りです。いずれのキットも、それ単体では開発できないため、別途開発キットが必要です。

搭載マイコン 対象
CY8CKIT-031 CY8CKIT-050 CapSense拡張ボード
CY8CKIT-025 CY8CKIT-001 高精度アナログ温度センサー拡張ボード
CY8CKIT-017 CY8CKIT-001 LIN拡張ボード
CY8CKIT-029 CY8CKIT-050 LCDセグメントドライブ拡張ボード
CY8CKIT-012 CY8CKIT-001 プロトタイピングおよび開発拡張ボード

CY8CKIT-031

CY8CKIT-031は、別売りのCY8CKIT-050で使用するよう設計された、CapSense拡張ボードです。

CapSenseとは

サイプレス社の提供するタッチボタン向けソリューション。既存の機械的なボタン(スイッチ)を静電容量方式のタッチセンサで置き換えている。

CY8CKIT-025

CY8CKIT-025は、別売りのCY8CKIT-001で使用するよう設計された、高精度アナログ温度センサー拡張ボードです。これらを組み合わせることで、シングルチップの温度検知および制御ソリューションの開発・評価が可能です。

CY8CKIT-017

CY8CKIT-017は、別売りのCY8CKIT-001で使用するよう設計された、LIN拡張ボードです。

LIN(読み方:リン)とは

LINとは、自動車業界で多く使用されるネットワークの規格。Local Interconnect Networkの略。LINによって、シンプルで安価な車載向けサブネットワークが構築できる。

CY8CKIT-029

CY8CKIT-029は、別売りのCY8CKIT-050で使用するよう設計された、LCDセグメントドライブ拡張ボードです。CY8CKIT-029を使って、LCDの駆動能力を評価できます。

CY8CKIT-012

CY8CKIT-012は、別売りのCY8CKIT-001で使用するよう設計された、プロトタイピングおよび開発拡張ボードです。CY8CKIT-012によって、カスタムボードを作成する前に、アプリケーションに必要な回路を正確に評価、開発、プロトタイプ化できます。

ポイント
  • CY8CKIT-031:CapSense拡張ボード
  • CY8CKIT-025:高精度アナログ温度センサー拡張ボード
  • CY8CKIT-017:LIN拡張ボード
  • CY8CKIT-029:LCDセグメントドライブ拡張ボード
  • CY8CKIT-012:プロトタイピングおよび開発拡張ボード

PSoC 5LPの対応OS

PSoC 5LPに対応している主なOSは、下記の通りです。

  • FreeRTOS
  • embOS
  • ThreadX
  • μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compact(弊社製品)

弊社製品「μC3(マイクロ・シー・キューブ)」のご紹介

μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compactは、マイコン内蔵の小さなメモリだけで動作するように最適化された、コンパクトなμITRON4.0仕様のRTOSです。

μC3/Compactは、ソースコードに直接コンフィグレーションを行うのではなく、付属のコンフィグレータによりGUIベースでRTOS、TCP/IP、デバイスのコンフィグレーションからベースコードの自動生成まで行います。

小さいフットプリント
マイコンの小さなROM/RAMのみで動作するように最適化された最小2.4Kbyteのコンパクトなカーネル。メモリ容量が小さい安価なデバイスを使用する事ができます。
μC3/Configurator付属
選択・設定するだけでベースコードが生成できるコンフィギュレーションツール。開発時間の大幅な短縮や、コーディングミスの減少が可能。RTOSの初心者でも簡単に開発をスタートすることができます。
豊富なCPUサポート
業界随一のCPUサポート実績があり、技術サポートも充実しています。CPUの選択肢を広げ、機会費用を抑える事ができます。業界随一のCPUサポート実績があり、技術サポートも充実しています。ご使用予定のデバイスで直ぐに開発着手が可能で、ご質問に対して24時間以内の1次回答を徹底しています。
省電力対応
デフォルトで省電力機能がついているため、システム全体の省電力に貢献します。

μC3のライセンスの種類・詳細

ライセンスの種類

ライセンスの種類は3つあります。

  • 研究開発用プロジェクトライセンス
  • 開発量産用プロジェクトライセンス
  • プラットフォームライセンス

研究開発用プロジェクトライセンス

研究開発用プロジェクトライセンスは、研究開発のみ可能なライセンスです。ライセンス購入時の段階で、製品化まで見えていない場合や、フィジビリティスタディの場合にお勧めです。

研究開発用プロジェクトライセンスのライセンス費用は、このあとご紹介する開発量産用プロジェクトライセンスの60%の価格です。

有償の保守契約に加入中の場合、開発量産用プロジェクトライセンスのライセンス費用の40%オフの価格でアップグレードが可能です。

開発量産用プロジェクトライセンス

開発量産用プロジェクトライセンスは、研究開発から量産販売までが可能な標準的なライセンスとなります。開発量産用プロジェクトライセンスの対象製品の範囲には、1種類の製品型番だけでなく、その製品ファミリ(派生機種)が含まれます。

有償の保守契約に加入中の場合、プラットフォームライセンスのライセンス費用との差額でアップグレードが可能です。

プラットフォームライセンス

プラットフォームライセンスは、プロジェクトライセンスの対象範囲を広げたライセンスです。プラットフォームライセンスの対象製品は、1種類の製品ファミリだけでなく、複数の製品ファミリが範囲となります。サイトライセンスではございません。

※弊社のライセンスはプロジェクトライセンスの形式を採っております。ご購入時に該当プロジェクトの名称をご登録頂く必要があり、その際、「計測機器」などの抽象的な名称ではなく、具体的な名称を頂戴しております。

お客様のご要望をお聞きした上で適切な範囲を設定させて頂きますので、先ずは、担当営業にご相談下さい。

ポイント
  • 研究開発用プロジェクトライセンス:製品化まで見えていない場合や、フィジビリティスタディの場合にお勧めなライセンス
  • 開発量産用プロジェクトライセンス:研究開発から量産販売までが可能な標準的なライセンス
  • プラットフォームライセンス   :1種類の製品ファミリだけでなく、複数の製品ファミリを範囲とするライセンス

ライセンスの詳細

  • ライセンス費用の金額・計算方法:ライセンス購入時の固定の一括払いのみでご使用いただけます
  • 開発人数制限 :無(ただし同プロジェクト内)
  • 提供形態 :ソースコード
  • 使用範囲 :定義されたプロジェクト内
  • 使用CPU :型番固定ではなくCPUシリーズ(例:STM32F4シリーズ)
  • μC3/ConfiguratorはCPUシリーズ毎に用意されています

ライセンスの価格などの詳細については、下記より製品ガイドをダウンロードしてご覧ください。

資料ダウンロード(無料)

保守について

製品定価には契約日の翌月1日から6ヶ月分の無償保守が含まれています。その後、有償で保守を継続することが可能です。

また、年間保守費用は製品定価の40%になります。

無償保守期間終了後、継続して有償保守サービスにご加入いただいた場合は、製品定価の20%になります。(ただし、初年度分の保守とライセンスをセットで購入された場合は、初年度分に限り製品定価の15%になります。)

*研究開発用プロジェクトライセンスの保守費用は開発量産用プロジェクトライセンスの定価の20%になります。

保守サービスには以下が含まれています。

  • メールによる技術サポート(1営業日以内に1次回答)
  • 製品の無償バージョンアップ

PSoC 5LPとμC3/Compactの導入事例

  • 光学機器メーカー製 カメラのフラッシュ制御

など